 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
磁器は英語でチャイナ、漆器はジャパン。大文字なら国、小文字なら漆器です。付け加えると、動詞形もjapanです。全国のさまざまな漆器の違いは製造過程であったり得意とする器の種類であったりします。残念ながら現在ではすべての産地で、プラスチックや輸入ものが大半を占めるようになっていますが。日本最大の生産地である山中でも、出荷額における木製の比率は10%以下、国産の木材を使い、山中で作った、山中漆器と言えるものは全体の1%にも満たないです。これは全国どこの産地もほぼ変わらない比率です。
山中漆器の特長は、卓越したろくろ技術。そのため製品のほとんどは、上から見ると円形をしています。人間の手でどれだけ正円を形づくることができるかが、職人の腕の見せどころです。人間の手ではなく、機械の方が完璧な円を常に作ることができるのではないか、というわけでもありません。木は、生き物なのです。そして、年輪などで堅さが異なります。機械がまったく同じ形を大量に生産するなら、プラスチックのようにはじめから死んでいる素材が適しています。
そしてこれもろくろに関してのことですが、細かな筋をつけることが得意です。1cmの幅に何本もの筋をひくことができます。これは世界一の技術といっても誇大表現ではありません。この筋を器の外側、つまり手にする方につけておくと、持ったときに滑りにくくなるという利点があります。
また、ろくろで木地を薄く挽く技術にも優れています。木地が薄ければ薄いほど、変形を防ぐことができ、軽くなります。
機械で作った形と手で作った形は、よく見るとまったくの別物に感じます。その差異は物を眺めるときに、次第に大きなウエイトを占めるようになります。どのような差異があるのかを説明するのは難しいです。ひとことで言うと「味」や「たたずまい」になってしまいます。しかし、そういったひとことで済ませることのできない大きな差異です。それらの物が包有する「何か」が存在することを私たちは知っています。その感触と空気を知ってほしい、できれば漆器で。それが私の最大のモチベーションです。
他の動物に比べると鈍いですが、人間は自覚しているよりもセンシティブです。同じ傘でも、握ってみると自分のものではない違和感を感じたことがあると思います。靴などになると、まるで違います。そうしたことに鈍感にならないでください。偽物を偽物と知って愛用するのと、本物と勘違いして悦に入っているのは違います。
まんまるな皿や椀を作らせたら誰にも負けん! と思っているのが、山中の職人たちです。当店の応量器などは、6つのアイテムが入れ子になって収まります。手と指に伝わる感触だけを頼りにひとつひとつ挽いています。木は、木目や部位によって硬さが違います。それでも同じ形に作っていきます。大量生産でないということは、ひとつからでも作るということです。依頼する方がいれば、ひとつだけのテーブルも、ひとつだけの皿も作ります。職人たちも、難しいものほど燃えるのではと私は勝手に思っています。誰が作るよりも自分が、という気持ちでなければ、ただのマシーンです。存在意義がありません。どんな仕事でもそうだと思います。私も、ありふれた形ばかりデザインしていたら、いなくてもいいということになります。
同じ料理でも、盛り付ける器によって雰囲気はがらりと変わります。買ってきた肉じゃがも漆器に入れ替えれば、少なくとも口に入れるまでは料亭気分です。器は使う物であって観賞する物ではありません。観賞に値するのは、時の流れに耐えて価値を有する偉大な作品だけです。どんどん漆器を使って、料理を引き立てるコーディネートを楽しんでください。
たに屋ではほとんどの商品に縦木を使います。コストは高く、なかなか入手できません。しかし、歪みなどの経年変化が少ないのです。木地を乾燥させる期間も、長い場合には2年近く乾燥させます。そうしなければ生産効率は上がるでしょう。しかし、それらのことをおろそかにすると、いつまでも美しく愛用できる器ができないのです。
たに屋では、国産の素材だけで漆器を作っています。木はもちろん、目に見えない下地の部分で使う地の粉と砥の粉も、京都の山科産などの名産地から調達し、それを各工程の職人に渡しています。なぜそんなところにまで手間とコストをかけるのか、そんなところはいいから安くできないのか、そうおっしゃる方も多いです。しかし、それはしてはいけないことなのです。きちんと木を乾燥していないと、熱いものを入れたときに木に含まれた水分が膨張し、器が変形したり割れてしまいます。口につけるものなので、石油が原料の溶剤や接着剤は一切使いたくありません。色を出すものも、鉱物が原料の顔料ではなく、たに屋では植物が原料の染料を使っています。法規制がないために何でもありの漆器ですが、万が一のことを考えると恐ろしいです。石油原料など化学物質を一切使わず、土に還るものが、真の意味でサスティナブルであるとたに屋は考えます。
たに屋の漆器は、買って数年で漆がはげて、危険なものが表に出てくるといったことは絶対にありません。あなたのお子さまやお孫さまの代になっても艶と深みを保ち続ける、美しく、体に害のない漆器です。 |
 |
 |
|
 |