fragile?
意外ですが、遺跡を発掘していたら漆器が出てきた、というくらい漆器は長持ちします。とはいいましても、寿命に関してはプラスチックに勝る素材はありませんが。漆器を売ろうとしている人の売り文句に、陶磁器と違って落としても割れないという常套句があります。落とさないでください!  打ち所というものがあります。畳なら平気でしょうが、畳であれば陶磁器だって平気でしょう。
 
では漆器を長く使っていって良いことはあるのか。あります。10年使ってみてください。待てませんか?  深みや味わいは簡単に手に入りません。ヴィンテージのジーンズが高いのは、決して希少価値だけではありません。
 
10年も同じ食器を使うなんてことないだろうなあと思う方は、以下は読まなくても結構です。
 
漆器を長く使うためには、基本的なことだけ心がけてください。とはいっても、よくある「意外と簡単、漆器のお手入れ」などという、そう言った時点で面倒なイメージを与えていることにも気づかない人が考えたフレーズに騙されないでください。「やっぱり大変、漆器のお手入れ」です。覚悟してください。
 
まず、当然ですが電子レンジ不可です。漆器は呼吸する生き物なのです。面倒ですが保存容器に移し替えて冷蔵保存し、レンジで温め、漆器に移し替えてください。洗い物が増えて環境破壊ですが、漆器は物流時以外には環境破壊ゼロですので許してください。
 
その洗い物のときは普通の中性洗剤でかまいませんが、つけすぎに注意してください。たわしでこするなんてもってのほかです。そういうわけで薄々お気づきだとは思いますが、つけおき洗いは不可です。さらに、洗い流した後は、水気が乾ききる前に拭いてあげてください。普通のコットンで構いません。ぐらぐら煮え立った液体を豪快に注ぐのも、避けたほうが良いでしょう。特に日本料理は塩分が高いので危険です。塩分が高いと沸点も高くなることはご存じのことと思います。ただこれに関しては、たに屋の商品は科学物質を一切使用していないので、杜撰な漆器よりは堅牢です。さらに、冷蔵庫と冷凍庫不可です。直射日光も長時間は苦手です。当然ですが直火は不可です。生き物などとレトリックを使う以前に、木なのです。
 
要は、自分が不快だと思うような状況にさらさなければ良いのです。
 
あとは、フェルトのような繊維の細い布でたまに磨いてあげてください。それはもう美しく深みのある艶を放ちます。乾いたり擦れて白っぽくなることのない、深い深い艶です。漆黒は、この世に存在する色の名前で最も黒い黒です。印刷ですとC70+M50+Y50+K100ですが、それは印刷された場合ですので、ほんものの漆器の深みのある黒さは再現できません。ですので、雑誌やカタログなどでは、塗りの違いを見分けることはできません。
 
使わないときは、あまり乾燥しすぎない場所に保存してください。流しの上や下や食器棚で構いません。ほこりが付着すると艶が鈍ってきますので、残念ながらすてきな棚でディスプレイ感覚の収納はできません。
 
これだけのことに気をつければ、漆器はいつまでも美しさを保ちます。でも、10年に一度くらいは、たに屋へお送りください。塗りが薄くなった箇所などを補修いたします。たに屋の商品でなくても、補修をお受けしています。割れた陶磁器の復元もしています。これは古来から漆器職人の仕事です。10年愛用していただければ、ビンテージジーンズや極上の革製品もびっくりの味を醸しています。
 
それはまるで、大切に保管しながら何度も読み返したラブレターの持つベールのようです。
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